木曜日, 4月 02, 2009

まくろい空に
ぽっかりあいた
まるい穴
向こうの空は
どんな色


もう私を
追わないで
そんなに私を
見つめないで
白い月


紫色の朝の空
西に残る
白い月
白いままで
稜線に落ち


川面に映る
月が
波うち
どこまでも
流れていく

海綿体で
できた
からだが
月の光を
吸込んで


月が
やけに
冷たくて
思わず君に
しがみつく


夜空に浮かぶ
ゆりかごで
寝てみたいと
だだをこねる
清らかな眼

月(2008.11~)

凍りつく
月の光を
身に纏い
君の前に
蒼く跪き


ゆうべの
上弦の月
あなたの
目のよう 冷たくて


月のない夜に
この道を歩く
あてもなく
悲しくもなく
音もなく

さびしさ(~2009.3)

深々と
雪が降り
心の中に
雪が積り
真白き闇


泣きたくて
駅のトイレ
ドアの外の
青春談義は
知らない世界

さびしさ(2009.2~)

部屋の
片隅に
置き忘れられた
手袋を
握りしめて泣く


川が流れ
風が流れ
雲が流れ
時が流れ
涙が流れ



風がもたらす
音だけが
クリーム色の
部屋に流れる
鼓動さえもなく

花(~2009.3)

梅の香に
酔う
このまま
花の中に
溶けてしまおう


北風と
太陽と
手を組み
開く
花蕾



つぎつぎと
さきみだれ
ほんのりと
空も恥らい


梅の木を
揺らす
ひよどりの
つがいであるを
思い出し

さよならの
文字を
何百回
書いたろう
花が散るたびに


花蜜で
満たされた
からだの中は
木枯らし吹いても
あたたかい


からからに
乾いたブーケの
花びらを
手で握り潰して
次へ進む

そばにいて
さびしいの
花をあげる
だから
いかないで


白い花を
摘んできた
その指先の
花の香を
そっと嗅ぐ


青い花を
可憐だと
手に取る
その手を
払いのけ

赤く揺れる
薔薇の花に
閉ざした心が
入り込み
残る指輪


刺々しい
心の中の
薔薇一輪
叫び狂いて
投げつけん


赤い薔薇は
花びらちぎりて
食らうもの
棘でおまえを
傷つけるもの

青き部屋に
花一輪
揺れている
風もないのに
ゆうらりと


台所の流しに
花びらちぎりて
涙と流す
飛び散る軌跡
かき消された嗚咽


冷たき花を
くちびるに
寄せてなお
消えるものか
心の疼き

花(2008.9~)

だれよりも
うつくしく
あでやかに
あらんとす
天向く花芯


揺れる
揺れる
花のまわりで
わたしが
揺れる


金木犀の
香りがするのに
姿が見えない
探しとまどう
恋するように

恋愛歌(~2009.3)

お願い行かないでと
言わせた
女の
伏し目がちな
喜び


恋をした
あの日を
返してと
日記帳を
火にくべ


桜を見て
歩いていたら
二人同時に
つまずき笑う
そんな恋

雨の日は
猫を抱いて
泣く日です
あした笑顔に
なるために

恋愛歌

緩やかに
春がきて
もう一度
あなたに
恋をする


指切りをした
あの時をまだ
忘れないのに
どんな約束か
忘れたふたり


また
おなじこと
考えている
同じ言葉で
考えている

恋愛歌

いつも一緒
わかってるのに
確かめたいの
目があうたびに
触れあうたびに


くちびるから
くちびるが
はなれるとき
あじわう
充実感


あなたの
腋の下に
頭をすっぽり
ここが私の
居場所なの

恋愛歌(2008.11~)

青い空に
放散して
跡形もない
ひとつの
終わり


紅を引く
君の眼に
触れてほしくて
君の口に
近づきたくて


紅を拭く
君の眼に
触れぬように
君の頬に
触れるために

春(2009.2~)

山がほんのり
色づいて
今年も
春が
やってくる


耕す
土の
温もりと
香りを運ぶ
春の風

桜を詠む(~2009.3)

朝ごとに
変わりゆく
色あいに
妖しい恋を
秘める桜


満開の桜の下を
ゆるりと歩く
少女たち
大人びた話さえ
桜色に染まり
春霞み
乙女の
黒髪に
ひらり
花びら


墨絵のなかの
桜花
風に散りても
永久に
とどまり

桜花<さくらばな>永久に<とわに>


春の雪
降る
桜の花に
降っては消え
降っては散り

桜を詠む(2008.12~)

小雪舞う
街道の
桜木に
花咲いて
春を想う


猫の背のように
寒空のなかで
まるく凍える
桜のつぼみ
咲くときを待ち


日々
移ろいゆく
桜木の姿
今日の色を
恋す

心象(~2009.3.31)

唐突な
別れの言葉が
どこまでも
青い空に
染み渡る


絶えることなく
流れ落ちる滝を
絶やすものかと
根を張る木々よ
赦してよ人間を


臓物を
もつものの
しあわせを
美しきなりで
嗤うミジンコ


言の葉を
玩びつつ
己を癒す
己の膿を
言に晒す

心象

夜明け前の烏が
二羽三羽
蒼い静寂を
破って
飛んだ


淡い琥珀の葡萄酒が
ほんのり薔薇色に
映るまで
見つめあっていたい
春の午後


生きるという字を
百万遍も
書きなぐり
それでも時に
線路を見つめ

心象

空に浮かぶ雲が
白い塊ではないことを
知ったときの
幼なき悲しみ
いまだ抱えて


もとめあうことを
あまえとみなし
すべてとのかかわりを
こばみつづけたあげくの
孤独


私の中に
蠢くものから
のがれることができぬので
このからだを
裏返してみる

心象

朝日のあたる
海の上のこの道は
私だけの道
あなたの見る道とは
少しだけずれている


苦しくて
こそこそと
逃げだす
松の実ほどの
勇気をかかえ


鯛焼きの
温もりを
両の手で
包みつつ
見上げる空

心象

苦しくて 空を見上げる 星の瞬きは 素知らぬ顔で 遠くのまま


雨空に 落ちていくよう 吸い込まれていくよう 足もとには何もなくなり 重力さえもなくなってしまい


ゆらゆらと ゆらぐ心の なかにある 熾火は誰も 消せはしまい

心象

積み上げてきた
時間が
崩れ散乱しても
消えることのない
軌跡


いくつもの
儚い夢をみた
その中の
たった一つの
夢にすぎない


埋み火を
埋み火のまま
誰知ることなく
燃え尽きるまで
まさぐりもせず

心象(病室にて)

網戸越しに 月を眺める ビルの上の 僅かな空間 星などなく


真っ黒な ビルとビルの あいだから 一センチメートルの 朝陽が燃える


茜色の夕焼けが 最後まで 茜色のまま 暗闇になればと 願いつつ

心象

生きたいと
叫ぶ声を
背中に
黙々と
己を生きる


五線譜に
収まり切れない
音符たち
ふわりと浮いて
地に落ちて


からだが
どんどん
軽くなり
どこまで
流れていくのやら

心象

夕焼け空に
手を伸ばす
光に包んで
連れていってよ
あの人のもとへ


枯葉舞い
舞い落ちて
土になるか
灰となるか
ああ人とて


漆黒のなかにも
わたしはいる
意識の中に
言葉が生れた
瞬間から

心象

月光を
浴びて
佇む
蒼い
背中


水墨画の如き
景色
裂き
鉄の
塊が走り去る


どんな言葉も
聞きあきたろうから
私は黙って
ここにいる
泣いてていいよ

心象

枕の下を流れる
二人の過去を
夜通し眺めて
飽きもせず
堰きとめもせず


三日月の陰は
夜空に溶けて流れても
大気に青く溶け出しても
なお月であることから
のがれられない


空の
色は
濃くなるほどに
空(くう)
となり

心象

零れ砕ける
飛沫のように
地に届かぬ
滝のように
我が軌跡


秋色の
百貨店
行き交う
女たちの
無表情


漆黒の世
言葉は放散し
意志もなく
肉体は分子となりて
宙を漂う

心象(2008.10.13~)

言の葉が
はじけ散り
光のない
漆黒
時が失せる


だいだいいろの
ひかりのなかで
わたしとあなた
くちづけかわし
とけてながれる


砂の城を
つくりて
こわす
波に依らず
己が手で